滋賀県立膳所高等学校（理数科）
合格-2015年度

努力家はきっと無心

僕は、建築家になりたいと思っています。多くの人に、僕の設計した建物で快適空間を味わってもらいたいです。
昔から、ものづくりが好きなこともありますが、この職を通して、他人に感動を伝えたいという思いの実現が、最も大きな 目的です。

しかし僕は、昔から自分の思い通りにならないと感情的になる性格です。この性格はなかなか変えられず、きっと将来の職にも、支障をきたすことだろうと思います。何かが上手くいかないとき、悔しい気分になるのは誰もが同じでしょう。でもそこで僕は、表に出す必要のない感情をかたちにしてしまいます。きっと僕の中に、僕自身を安心させるために他人に甘えようとする、即ち、自力で解決することから逃げたがる感情があるのでしょう。これが受験での僕の大きな壁となりました。

〈夏期合宿（合宿）〉の三日目のテストで、数学の最初の問題が解けなくて焦りが出てきたとき、私は周囲をちらっと見回しました。このとき、他にもペンが止まっている人はいないだろうか、と私は考えていたのです。愚かな考えでした。自分の力で残りの問題に集中すべきなのに、周りも解けていないことに期待しましたが、そんなことわかるはずがありません。
私の中で焦燥と憎悪がわいてきました。大事なテストの最中に何を考えているんだという自責の念、一方では、もう終わってほしいという自暴自棄な思いも生まれました。そして、最後まで気持ちを切り替えられずに、終了の合図を受けました。

その後、私は友だちの前で、自分のテストの出来の悪さをしつこく話しました。その友だち自身も思うようにできなくて悩んでいたかもしれないのに、私は自分の出来の悪さを一方的に語り、そのうえ、会話の中で友人に私のミスを見つけられると、どうにもこうにも苛立ちを隠すことができませんでした。
受験の年になる以前から時々、自分が醜いなあと感じることはありましたが、本格的に受験に向き合った頃からそう感じることが増え、その苦しさも、より大きくなったように思います。

秋になり、〈日曜進学教室（日進）〉が始まってからも、先に述べた〈合宿〉でのテストと同じような状況に陥ることが多々ありました。そのようなときは、当然結果も思うように出ませんでした。模試の結果が良くなかったと知った日から次の模試までの間は、とにかく自分はダメな奴だなと思う場面が増えました。
何かにつまずいたときは、ネガティブ思考に陥ってしまいがちです。しかし、そうなってもテストの復習と学習のトレーニングだけは毎日続けました。どんなにネガティブな気持ちになっても、学習に精進した過去を裏切る気にはなりませんでした。

僕は不安になると、つい心の中で考え込んでしまいます。しかし、残酷にも受験は実力勝負です。どんなに心の中で願っても、実力によっては叶わぬものがあります。だから最後の一週間は何かを意識したりせず、感覚に任せて学習をしました。
不安な状況にいるとき、安心材料を探そうとするから不安がより一層大きくなるのだと思います。そんなときは、
「自分に、もう、安心材料などはない」
と開き直ってしまうべきです。僕の場合、そうすることで全力を出すことができます。いつ、それに気付いたのでしょうか。僕自身もはっきりとは覚えていません。

各校の合格発表日、自分の番号を見つけた瞬間も、意外と気持ちは落ち着いていました。もちろん嬉しかったのですが、興奮することはありませんでした。自分でも意外だと感じました。

最後に、受験を終え、部屋の片づけをしていたときのことです。大量に書き込まれた何冊ものノートを見て、八月から十二月までの五ヵ月が思い出されました。
きっと本当に努力しているとき、人は無心なのでしょう。上手くいかないとき僕は、
「努力してるのに」
などと思いました。そういった意識が、恐らく集中の邪魔をしたのでしょう。考えないことも大切だと知りました。

本当に最後になりましたが、最後まで応援してくださった英語のＮ先生、数学のＵ先生、Ｙ先生、国語のＴ先生、理科のＹ先生、社会のＴ先生、また一、二年のときお世話なった先生方、三年間を通して一緒に勉強してきた人たち、父、母、弟に感謝しています。